←トップに戻る     ←第12話に戻る     第14話に進む→





第13話  だから甘いって    progress by MIKI



 武器、防具ときたら、次はスキルの素だな。
 これも名前の通りスキルを覚えるためのアイテムだな。
 スキルってのは効果と掛け声が決められた技のこと。発動に必要なのはゲージと掛け声。
 残念なことにスキル名を叫ばないとスキルは発動しないんだ。これだけはスキルの難点なんだよな……。

 またスキルは戦いとは別の方法でレベルアップしていくんだ。
 そのレベルアップに必要なのが、これまたスキルの素なんだ。
 これを持って一度覚えたスキルを使うとそのスキルの強化をできる。

 スキルがレベルアップすることで大きく変わるのは威力、それは間違いない。
 だけどそればかりじゃないんだ。
 スキルはレベルアップすることで発動時の隙が少なくなったり、掛け声の省略が可能になったりする。
 レベルアップに上限はあるが、できるだけレベルを上げておくことも戦いに勝つには必要なことだ。

「リー、早よ始めへん?」
「おう。んじゃ足りない話はハヤトたちにでも聞いてくれ」
「うん、アリガトね」
 俺は隼人たちに亜美たちを任せ、武器を片手に俺を待つ月のもとへ移動した。

 ようやく月と戦うときが来たな。
「今日こそ勝たせてもらうぞ」
「ええよ?勝てるんやったらいつでも構わんよ」
 クソ生意気な……。
 俺だっていつもやられてばかりじゃないぞ。
「幽、合図たのむ」
「リョーカイです。俺が引き金引いたらスタートです」
 俺は合図前に武器を構えた。
 それに対して、アホみたいに棒立ちしている月。
 なめてるとしか思えん……。

パンッ!

 結局月が構えないまま合図の銃が鳴った。
 さっそくいくぞ。

「白牙《波》!」

 スキル発動と同時に俺の剣が激しく光を放つ。
 そして、光が止まないうちに切り下ろした剣の先から三日月状のかまいたちが飛び出す。
 俺のスキル『白牙』は一瞬だけ剣を激しく発光させ、目暗ましをかましたところに仕掛ける技だ。
 『波』は剣を振るうことでかまいたち状の斬撃を発生させる、剣による遠距離攻撃だ。

 月を相手に懐に入り込むにはこれが一番簡単だ。
 斬撃が月にとどく前に俺は走りだした。
 先に月を襲った斬撃は月が振るった剣によって簡単に消滅してしまう。
 白牙は発動速度と目暗ましを求めたスキルだからな。
 当然威力は期待できないけど、アレはアレでいいんだ。
 おかげで月の体勢は若干崩れてる。今なら一気に攻め込めるはず!

 俺は一気に回り込み、背後から月に仕掛けた。

キンッ!
 甲高い音を上げて俺と月の武器が交差する。

「甘いよ。その程度じゃうちは切れんよ」
「言ってくれんな。けど勝負はこれからだ!」
 月が振り向き始めたところに俺はスパートをかけた。
 だが、何度も何度も剣を振るうが月に致命傷は与えられない。
 月は極力回避行動をとり、必要に応じて刀で防ぎ、ときどき反撃してくる。

 俺はこの月の戦い方に違和感を感じた。
 普段の月ならもっと攻撃に転じるはずだ。
 それに、普段の月の守備行動は防御がメイン、回避なんてそれほど多用しない。
 回避をメインにして相手の自滅を誘い、隙を見てカウンターを狙うのはくろの戦い方だ。

(月のヤツ、何かを隠してやがるな)

 気になった俺は攻めるのを止め、月から数メートルの距離をとった。

「何考えてやがる」
「あり、ばれた?」
「お前らしくないことはすぐわかったよ」
 戦い方が完全にくろだった。こいつも幽みたいにスタイルを変えたのか?
「さすが、うちのことを想ってくれとるだけあんね」
「誰がお前なんか」
 お前みたいなタイプ、俺の好みじゃねェよ。
「バカやるのは戦いを終えてからだ。いくぞ!」
「あいよ」
 俺たちは互いに相手の出方をうかがった。
 どっちも攻め込まず、頭の先から足の先まで、一切の動きも見逃さない集中力で互いを監視しあう俺と月。
 そして数秒の硬直を経て、俺たちは同時に地面を蹴った。

 2人の距離は一気につまり、互いに勢いを落とさないまま武器を交える。
 何度も衝突する武器同士の衝突音、甲高い金属音が辺り一帯にこだまする。
 俺たちは武器を交え、力比べをする形で静止した。
 睨み合いながら互いに押し合う俺と月。

「やるやん」
「お前にゃ負けねェ……!」

 力比べをすること数秒、完全に互角の力比べに進展は見られない。
 さすがに硬直時間が長くなったのを気にして、俺たちは同時に身を退いた。
 数回のバックステップで距離をとりあう俺たち。

「様子見はこれまでだ。次で決めるぞ」
「オッケー、ちゃんとついて来んしゃいよ?」
「上等……、負けて後悔すんじゃねェぞ!」

 フェイントも警戒も必要ない。
 俺はただただ直線的に攻め入った。

「白牙《波》!!」
 走りながら放った白牙は俺のすぐ前を月に向かって飛んでいく。
 こんな真っすぐな攻撃、月からすればなんてことないだろう。
 そんなことは分かってる。

 白牙が月に防がれると同時に俺は地面を蹴った。
 飛び上がり、空中からの落下運動を加えて勢いよく切り掛かる。
 キンッと甲高い金属音を上げて2本の剣が交差する。
「甘いよ、リー」
「お前こそ、それで防いだつもりか?」
「む……?」
 甘いのはお前の方だ、月。覚悟しやがれ。

 落下の勢いを乗せた俺の剣は徐々に月の刀を押していく。
 そして月の刀を弾いたところで俺は叫んだ。

「赤牙(せきが)!!」
 刀を弾かれて無防備になったところへ俺はスキルによる追い打ちをかけた。
 高熱を帯びた俺の剣は赤みをおび、炎をまとって月を襲う。

 だが、刀を弾かれ無防備になった月に直撃するはずだった俺の剣は、カンッという音とと もに静止した。

「なっ……!?」
「だから甘いゆうてるやん」
 月はあろうことか、左手に構えた刀の鞘で俺の剣を止めている。
 刀を弾いたことで勝ちを確信していた俺は、決め手を防がれたことで判断力が鈍っていた。

 そんなとき、今度は刀を止められ無防備になった俺の体を目がけて、月の刀が襲い掛かる。
「三…日…月!」

 大振りに、そして素早く左肩から右膝にかけて月の刀が切り付けた。
 満タンだった俺の体力は一瞬にして空になり、切られた俺はその場に崩れ落ちた。
 体力が完全になくなっちまって、まったく体を動かすことができない。

「それまで。この勝負、月さんの勝ちです」
 俺が倒れ、完全に勝負が決まったのを確信した幽が試合終了の合図を出した。

 また負けちまった。赤牙は新技だったのに。
 やっぱ一発勝負にかけるべきだったか。




←トップに戻る     ←第12話に戻る     第14話に進む→

inserted by FC2 system