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第17話  スパイ、心を読まれる    progress by GAN



「あぁー、また負けたぁ」
 どうやら今ので決着はついたらしく、勝負に負けたユキさんはその場で大の字に倒れてしまった。
「やっぱり2人には適わないなぁ」
 ユキさんのそばに腰を下ろしながらアミさんが言う。
 それにしても何でまたバレーボールを?

 ユニバトを控えたユニの新人っていったら、試合が楽しみで、
 少しでも活躍できるように必死に狩りに打ち込む人が多いのに。
 やっぱり華の女子高生はユニバトよりも遊びのほうが重要なんですかね。

2人には何で挑んでも敵わないわね」
 お手上げと言わんばかりにあきれた表情を見せるアミさん。
「ふっ、私に勝とうなんて3秒早いわ」
「ナッキー、3秒はもう経っちゃったよ」
「え、じゃあ今戦ったら私たち負けちゃうわけ?」
「そういうことなんじゃない?」
 あぁ、ボケにボケを重ねてしまっては手が付けられなくなってしまう。
 ナツキさんというかたも、アキナさんというかたも、ボケ倒すとはやりますね。
 ボケとボケのコンビなんて、いったい何処のお笑いコンビですか。

 いや、そんなことよりアミさんとユキさんですよ。
 狩りはしないんですかね?


(………)


(………)


 ホント、狩りはしないんですかね。
 バレーボールが終わってから1時間も経つのに一向に変化がないですよ。
 4人で延々とおしゃべりを楽しんでます。
 遊んでるところを偵察してもメリットは無いですよ。
 それどころか、これじゃまるでストーカーじゃないですか。

『はなちん、ハチゼロの新人さんたちの偵察やめてもいいかな?』
『ダメ、続けなさい』
『そんなこと言ったって、もう1時間も変化無しだよ』
『じゃあ変化するまで待ってろ』

 この仕打ちに意気消沈した僕はその後2時間偵察を続けたが、
 結局何の変化もなく2人はログアウトしてしまった。
 あの2人は強敵ですね、スパイ的に。



 そして次の日、僕はまだスパイを続けていた。
 昨日はアミさんたちの偵察に時間を取られすぎて、肝心な人の偵察ができませんでしたからね。
 今日は早めに偵察してしまいましょう。
 正直ハヤトや新人さんたちより、マスターやくろさんより偵察しなければならないのは月さんです。
 彼女を攻略せずしてハチゼロに勝つことは不可能ですよ。

 いやまぁ、黒陽炎のような事例はありますけどね。
 たしか黒陽炎の皆さんはハチゼロに勝ったそうですけど、あれは月さんをたった数人で相手できるからですよ。
 残りのメンバーがその分相手を圧倒できれば勝てるわけですから。

 だけど正直言ってうちのメンバーにハチゼロの主力を抑えられる人はいません。
 恥ずかしい話ですが、全員でかかっても月さんを止められるかどうか。
 何しろうちのマスターとサブマスターの僕は元ハチゼロの下っぱですからね。

『それを言ったら元も子もないじゃん!』
『はなちん、人のココロの声につっこむの止めようよ……』
 近くにいるならまだしも、はなちん、この場にいないじゃん。
 あなたはそんなエスパー少女じゃないでしょうよ。
『そんなことより偵察はうまくいってんの?』
『今は月さんの監視をしているんだけど、もう1時間もふらついてるだけなんだよね』
『ふーん、あっそ』
 あっそって……、まる2日もついやしてスパイしてるっていうのにそれだけかぁ。

『誰か代わりの人を派遣してくれない?』
『ん、無理。みんな忙しいから』
『僕も暇じゃ……』
『いいからスパイを続けなさい』

 その言葉を最後に、それっきり何を話し掛けても返事がなくなった。
 あぁ、僕も 狩りしたいんだけどなぁ。
 まわりに遅れをとるし、ストーカー擬いで気が引けるし、ガンバレの一言もなしじゃ報われないよ。

「ガンバリや、めん玉」
「つ、月さん!?
 あぁ、早くもスパイ活動失敗しちゃいました。
 ターゲットに見つかってしまうなんてスパイ失格です。
 いや、元々スパイではないんですけどね。
 これじゃはなちんになんて言われるか。

「ところで月さん、普通に人のココロの声を聞くの止めてもらえません?」
「なんのことやらサッパリやね」
 さすが月さん、明らかなのにとぼけてくれますね。
 あまり設定破りなことはひかえてほしいですね。
「それとひとつ忠告しといたる」
「忠告……ですか?」
「うち、次のユニバトまでに狩りをする予定はないで」
「えぇ!?そうなんですか?」
 そしてまた人の考えを見抜くんですね。
 この何でもありな感じ、月さんらしいと言えばそれまでですが……。

「……わかりました。おとなしく自分の狩りに専念します。またユニバトの日に会いましょう」
「あいよ」

 僕はこうしてスパイ任務を離れ、通常の日々に戻った。
 そういえばアミさんとユキさんの偵察が終わってませんでしたけど、別に構いませんよね。
 僕は元々スパイではないわけですし。

 とりあえずマスターとくろさん、それから月さんをどうやって抑えるかが今我々が考えるべき難題ですね。
 正直、うちのマスターには頼れませんし。
 サブマスターとしてうまく我がユニを勝利に導かなくては。




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