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第18話  助っ人、迅さん    progress by HAYATO



 1週間という月日はあっという間に過ぎ去り、今日はいよいよホワイトウィンドウとのユニバトの日。
 あの集会での由紀ちゃんたちとの戦闘の後、自分の弱さに嫌気がさした俺はがむしゃらに狩りに打ち込んだ。
 レベルもかなり上がったし、新しいスキルも覚えた。
 今日は生まれ変わった俺の力を由紀ちゃんたちの前で披露する日だ。

 試合開始は午後の9時。
 俺は少しでも強くなるため、今日も今まで狩りに出ていた。
 試合開始まであと20分になったところで狩りを止め、俺は町の倉庫前広場にワープした。

 一瞬にして広場に戻った俺は広場の一角に見覚えのある集団を見つけた。
 未来に月さん、由紀ちゃんや幽もいる。
 俺は武器をしまいながらみんなの立つ場所に向かって走りだした。

「お、ようやくハヤトも来たか」
 いち早く俺の存在に気が付いた未来に合図を送りながら、俺はみんなのもとへ駆け寄った。
 えっと、1人、2人、3人……6人か。これで全員みたいだな。

「ハヤト。お前その格好、今日も狩りをしてたのか?」
 防具を装備したままの俺の姿を見 た未来が訊ねた。
「まぁね。今日はかっこ悪いところを見られたくないからさ」

「おー おー、男子高校生が見栄はってんなぁ」
 背後から聞こえる聞き覚えのある声に、俺はとっさに振り返った。
 するとそこには見覚えのある男が立っていた。
「迅!」
「迅さん」
 何しに来やがったと言わんばかりに声を荒げる未来ほどではないか、
 俺も突然背後に現われた迅さんに驚き、迅さんの名を口にした。

「ハヤトくん、あの人は?」
 ちょいちょいと俺の袖を引っ張りながら迅さんのことを訊ねてくる由紀ちゃんたち。
 いつものように顔をあわせるなり言い争う未来と迅さんを背に、
 俺は由紀ちゃんと亜美ちゃんに迅さんが何者なのかについて説明をはじめた。

 第1話以来の登場となる迅さんは、うちらと1番親睦の深いユニオン・黒陽炎のサブマスター。
 その肩書きに恥じない実力を備えており、その実力は未来と同程度。
 周りの人たちは2人をライバルと呼んでいて、未来と迅さんは嫌がりながらもそれを認めている。
 試合の結果はほとんど五分五分で、ユニバトや草試合と、ことあるごとに決着を付けようとしているようだ。
 ちなみに社会人らしく、平日は午後8時を過ぎるまでマナの世界に現われない。

「おい、ハヤト。彼女たちは誰だ?」
「迅さん」
 いつの間にか未来との争いを終えた迅さんは、再び俺の背後をとるようにして話し掛けてきた。
「私、アミっていいます。はじめまして、迅さん」
「あたしはユキっていうの。よろしくお願いします」
「こちらこそ。っていうか早速だけで2人ともうちに入らない?」

ドーンっ!!

 2
人の勧誘をはじめた直後、迅さんは未来に蹴り飛ばされて吹っ飛んだ。
 未来、相変わらず素早いツッコミだな。
「なに堂々と勧誘してんだ、バカ野郎!」
2人がダメなら、せめてアミちゃんだけでも……」
「やらん!」

 後の迅さんの話しでは、どうも迅さんはアミちゃんに一目惚れしたらしい。
 正直、ここまで素直に自分の気持ちをさらけだせる迅さんがうらやましい。
 俺も自分の気持ちをもう少しうまく表現できたらな……。

「ところで迅、お前こんなところで何やってんだ?」
「おぅ、リー。よくぞ聞いてくれた」
 前に未来が説明したと思うが、ここでもう一度。
 未来は以前別の名前を名乗っていた名残で、今でも昔からの知り合いにはリーと呼ばれている。
 呼び方をなおしているのはくろさんくらいだろう。

「で、なにしてんだ」
「ちょいと訳があってな。これ見てみ」
 迅さんはそう言いながら自分の頭の上を指差した。
 通常、人の頭の上にはその人の名前と所属するユニのマークが浮かんでいる。
「お前そのマーク……」

 未来は迅さんのマークに気が付いて言葉を詰まらせた。
 迅さんが所属する黒陽炎のマークは、黒の背景に真っ赤な炎を模した文字で黒陽炎と描かれている。
 だが、今の迅さんのマークはいつものそれとは明らかに別物だ。
 白い背景に薄い水色で『W.W』と描かれている。

「そう、ホワイトウィンドウのマークだ」
 頭の上のマークは誰でも自由にかかげられる物ではない。
 自分の所属するユニのマークが自動的にかかげられるんだ。
 つまり迅さんのマークがホワイトウィンドウのマークに変わっているということはそういうことだ。

「お前……、黒陽炎をクビになったのか?」
 すばらしく悲しいことを口にする未来。
「ちげェよ、バカ。連中と利害関係が一致したから、助っ人としてユニバトに参加することにしたんだよ」
「ふーん。ま、はなレベルの奴らが相手じゃつまらないのは確かだしな」
 確かに、はなちんの実力は俺と同程度。
 未来や月さんからしてみればつまらない試合だろう。
「少しはおもしろくなりそうやね」
 迅さんの参加で少なくとも未来には頼れなくなる。
 どうも俺たちにも使命感がでてきたな。

 その後しばらくしてはなちんや眼たちも広場に集まってきた。
「今日は負けないかんね」
「ハヤト、幽、覚悟してください」
 メンバーが集まったところで、はなちんと眼は宣戦布告を終えるとまもなく姿を消した。
「んじゃ、また後でな」
 迅さんもはなちんたちを追うようにして姿を消す。

 ユニバトは専用のバトルフィールドで行うため、ホワイトウィンドウの連中はそこにワープしたんだ。
 バトルフィールドはユニバトに参加するユニの貸し切りで、参加する俺たち以外はワープできない。
 誰にも邪魔されることなく、誰にも迷惑を掛けずに戦える、それがユニバトなんだ。

「よっしゃ、俺たちも行くぞ!」
「「おぉ!」」
 未来の掛け声にあわせて気合いを入れた俺たちは、
 先にワープしたホワイトウィンドウを追ってバトルフィールドにワープした。



作戦会議(ホワイトウィンドウ)    progress by GAN

「いい?標的はハヤト、幽、それと新人の2人にしぼるんだからね?」
「君たち3人はくろさんと月さんを足止めすること、オッケー?」
「「ラジャー!」」
「迅さんは思う存分マスターとやりあってください」
「おう、リーは俺に任せとけ。足を引っ張るようなことはしねェよ」
 総勢10名、内3人でくろさんと月さんを足止め、迅さんはマスターを、残り6人で幽たち4人を担当だ。
 迅さんとマスターは引き分けると考えても、僕たちが幽たちを圧倒できればうちが勝つ見込みはある。
 すべては月さんたちを捕まえておけるかにかかってるんだ。




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