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第20話  同期の強さ    progress by HAYATO



「ハヤトくん、私たちはどうしたらいい?」
 俺と幽から少し退いたところで構えながら亜美ちゃんが訊いてきた。
「そうだなぁ……。あいつらはこの前の俺と同格と見ていい。2人でやつら2人相手にできる?」
「もちろん!あたしたちあれからまた強くなったんだから。ね、アミ」
「もちろん」
 どうやらあれからまた鍛えてきたらしいな。2人とも顔が自信で満ち溢れてる。
 これなら任せても大丈夫そうかな。

 俺はホワイトウィンドウの連中に聞こえないよう、幽の耳にささやくように話し掛けた。
「幽、俺たちで4人叩くぞ」
「いいけど誰を彼女たちに任せる?」
「眼辺りがいいかな。あいつもサブマスだし、ユキちゃんたちが倒してくれればポイントが大量に手に入る」
「大丈夫かなぁ?」
 やっぱり幽は不安らしい。
 確かに2人はほんの1週間くらい前にマナデビューしたばかりの初心者。
 普通なら相手のサブマスを任せられるようなレベルじゃない。
 けどあの2人は月さんの英才教育を受けている。

 それに
「俺は一度戦ってるからさ。2人の強さは人一倍分かってると思うんだ」
「……そうだな、ハヤトがそう言うなら俺も信じるよ。で、俺たちは誰を担当する?」
「はなとその他3名がいいと思う」
 はなちんと眼はハチゼロにいた頃から何かと仲が良かったからな。
 チームワークを考えると、あの夫婦をまとめて相手にするのは自殺行為だ。

 考えを固めた俺たちは耳打ちで由紀ちゃんたちにもそのことを伝えた。

「考えはまとまったの?」
 俺たちの様子を見ていたはなちんが、タイミングを見計らって問い掛けてきた。
「おうよ、待たせて悪かったね」
 ヒーローの変身シーンを黙って見てる悪役のような配慮に感謝するよ。
「いくよ、みんな!」
 俺はリーダー気取りに掛け声をかけた。
「「おー!」」
 俺の掛け声に乗って気合いを入れる由紀ちゃんと幽。
「かかってこいやぁ!!」
「はなたん恐い……」
 この夫婦はまた漫才してるよ……。



主力捕まる
    progress by TUKI

 みんなから少し遅れてキャンプを出たうちとくろは、
 キャンプの出入口から20メートルくらいのとこでホワイトウィンドウの3人に捕まった。

 手を出す気はなかったし、簡単にやられる気もなかったから、しばらく連中の行動をただ見ていたんやけど。
 連中は棒立ちするうちらを囲むと、両手のひらをうちらに向けてスキルの詠唱をはじめた。
 するとうちらを中心に半径5メートルくらいのガラスの壁みたいなんが地面から姿を現し、
 うちらを取り囲んだまま天辺が見えなくなるまで伸びていく。
 さっきも言ったとおり、うちらは捕まった。

「捕まっちゃったね」
「やね。くろはどうしたい?」
「ミキに「手を出すな」って言われてるし、何もされないようならこのまま捕まっててもいいかな」

 ふむ、触ってみた感じじゃこの壁、ガラスなんかより厄介そうやね。
 魔法で作った光の壁ってとこやろか。
 飛び越すこともできそうにないし、あの3人を倒さんと脱出は無理そうや。
 ご丁寧に離れて魔法をかけているのはそのためやね。
 うちらを捕まえて、リーは迅に任せる。
 なるほど、勝つ気で来てるようやね。

「しゃーない。しばらく捕まっといたるか」
 この位置ならアミちんたちも見えるし、退屈はせェへんやろ。
 せいぜい楽しませてもらおうやんか。



チームワーク    progress by HAYATO

ドッ!

 俺と幽は互いの背中を合わせて周囲からの攻撃を静止させた。
「さすがに2人を相手にするのはきっついな……」
 複数人を相手にするのは慣れているが、同格の連中に囲まれた経験はない。
 2分ほど戦ったが何をするにも後手に回ってしまう。
 というよりほとんど攻撃に転じれていないのが現状だ。
「攻撃はバラバラなんだけどね……」
「確かに、チームワークはなっちゃいないな」
 はなと眼を離したのは正解だったらしい。
 寄せ集めのユニだけあって、連携攻撃は仕掛けてこない。

 それぞれが勝手に動き回るから、互いに邪魔し合ってちょくちょく隙はできるんだが、
 そこを突こうとするとこっちにも隙ができてしまう。
 ここでへますると手の空いた敵が他の仲間に襲い掛かって、雪崩式にこっちが全滅してしまう。
 うかつには飛び込めない。
 どうにかして逆雪崩を起こす方法はないもんか……、あ。

「幽、戦い方を変えるぞ」
 俺はまわりの敵の動きに注意しながら幽に話し掛けた。
「うん、俺も同じこと考えてた」
 俺たちは顔を見合わせ互いに意思の疎通を図った。
 どうやら幽も俺と同じことを考えていたらしい。
 俺たちは同じ方向に走りだし、敵の包囲網から抜け出した。
 抜けてすぐに振り向き、再び対峙する。

「俺が先に行くよ。リーチの長いハヤトの方が追い打ちには有利でしょ」
「そうだな。うまく隙を作ってくれよ」
「オッケー、行こう」
 相手の4人は同じ方向にまとまった。
 狙うは一瞬の隙、幽が作ってくれるそれを待って決着をつける。
 一足先に飛び出した幽を追って俺は走った。
 右手に構えた小型の銃で発砲し、威嚇をしながら幽は走る。

 はなたち4人は俺たちの思惑どおり、幽の発砲した弾丸をかわしながら幽に向ってきた。
 そして、はなちんを除いた3人は一斉に幽に襲い掛かってくる。
 相手3人の剣をすべて左手のガンズブレイドで防ぎきった幽は、
 すかさず武器を振って3人の武器を弾き、相手をのぞけらせる。

「ハヤト!」
「任せろ!」
 俺は3人のうち真ん中のやつにねらいを定め、渾身の力をこめて槍を突き出した。
「うっ……!」
 相手は幽のなぎ払いによってのぞけった体を無理矢理そらせ、俺の突きをかわした。
 けどその程度じゃまだまだ甘い。
「幽!」
「イエッサー!」
 声と同時に、振り切っていた左手のガンズブレイドを素早く構えなおした幽。
 俺の攻撃をかわして無理な体勢になっている相手をここぞとばかりに切り付ける。
 肩から脇腹にかけて剣閃を走らせると同時に、ガンズブレイドの引き金を引いて銃撃による追い打ちをかけた。
 斬撃と銃撃、異なる2種類の攻撃を同じヶ所に同時に受けた敵は2メートルほど後方に飛び、
 着地と同時にその場に倒れた。
 まずは1人、仕留めたり。




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