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第21話  ハヤト苦悩、眼関心    progress by HAYATO



「やってくれるじゃん」
 一歩引いていたはなちんが倒したやつと入れ代わりに幽に剣を振り下ろした。
 だが幽は再び剣を構えなおし、はなちんの攻撃を受けとめる。
「やられないよ」
「隙あり!」
 幽に剣を防がれ攻め手を失ったと思っていたが、はなちんは逆に幽の武器を封じ、
 防御手段を失った幽の額を蹴り飛ばした。
 同時に残りの2人が飛び出し、追い打ちをかけようとしてきたが、そこは俺が両手に分散した槍で迎撃した。

 はなちんが蹴りじゃなく突きで幽を倒していれば、はなちんにも攻撃できたんだけど、
 はなちんの体勢にためらって攻撃に移れなかった。
 その隙にはなちんは右手に握った剣で俺と幽にとどめをさす。

 結果、たった数秒で5人の死体が出来上がった。
「ハヤト、はなちんが無防備だったとき、なんで攻撃しなかったの?」
「そういえば一瞬止まったよね。なんで?」
 立て続けに俺を責める幽とはなちん。
 仕方ないだろ、俺は恋愛経験が少ないんだから。
 はなちんのあんな格好見せられたら目がいっちゃうって。
「ねェ、ハヤト?」
「ハヤト?」
「うるさいなぁ。ユニバトにスカートなんか履いてくるなよ……」



初心者とは思えませんよ
    progress by AMI

 隼人くんたちが背中を合わせて戦法を変えた頃、
 私と由紀も1対1で戦うのを止めて共同戦線をはることにした。
 相手はサブマスターの眼人さんと男の人が1人、武器はともに剣が1本。
 月さんの話じゃ、こういう複数対複数の試合では、実力差よりもチームワークの差が試合の結果を分けるらしい。
 だったら私たちにもチャンスはある。

「アミさん、ユキさん」
「は、はい。なんですか?」
 私は眼人さんに名前を呼ばれたことに驚いて返事をした。
2人が初心者であるということは聞いています。ですが僕は手を抜くわけにはいきません。うちの勝利は僕らの働きにかかっているので」
「えぇ、手加減なんか止してください。私たちは練習も兼ねてるんですから」
 実践練習ほど自分の力がわかる練習は無い、月さんはそう言っていた。
 手加減なんかされたら実力が出し切れないもの。
「そうですか。では手加減はしません、本気で行かせてもらいます」
「はい。私たちも易々と負ける気はありませんよ」

 本気になった眼人さんたちに勝てる保障はない。
 いえ、圧倒的に私たちの方が不利だと思う。
 だから私たちは私たちにできる最善を尽くそう。

「アミ、この前みたいにまたあたしが前に出ていい?」
「うん、その方がいいと思う」
 2
人で前に出て仕掛けても、仲間に当てまいとして攻撃は十分にできなくなるし、
 余計に頭を使うせいで隙も生じやすくな る。
 ならいっそ由紀が1人で前に出て、思う存分暴れてくれた方が互角に戦えるかもしれない。
 それに私だって前には出ないけど援護射撃で参加できる。
 私がいるかぎり由紀の隙を突かれるようなへまはしないわ。

「いくよアミ」
「えぇ、いつでもオッケーよ」
 私と顔を見合わせた由紀はただ1人、眼人さんに向って走りだした。

 眼人さんが振り下ろした剣を左手でつかみ、右手で殴りかかる由紀。
 だが、由紀の右手は眼人さんの左手に阻まれダメージを与えるにはいたらなかった。
 由紀と組み合って硬直した眼人さんは隙だらけ、この機会を逃す理由はない。
 私がそう判断して眼人さんに銃口を向けたその瞬間、私よりも一足早く、
 もう1人の相手が由紀に攻撃を仕掛けようと飛び出した。
 私はとっさに標準をそっちにずらし、由紀に飛び掛かろうとする相手をうち落とした。

「アミ、ありがとー」
 由紀はお礼を言いながら眼人さんの下腹部に足をつけ、勢い良く蹴りだした。
 眼人さんは蹴られた勢いで後方に飛び、由紀はその反動で私の目の前に着地した。
「あれ?さっきの人は?」
 眼人さんのパートナーが居ないことに気付いた由紀は、辺りをキョロキョロと見回しながら疑問を口にした。
「消えちゃったみたい」
 私も眼人さんに注意してたから確実じゃないけど、何かが突然視界から消えるのを感じた気がする。
「体力が無くなったらしいですね。たぶん今頃キャンプに居ますよ」
 私たちの話を聞いていた眼人さんが状況を教えてくれた。
 どうやら1人は倒せたらしい。

「やりますねアミさん。たった2回の攻撃を的確に急所にたたき込むなんて」
「そんな、偶然ですよ」
 確かに私はあの人の急所、頭と胸を狙って引き金を引いた。
 ただ、マナの戦いに急所があるなんてことは知らなかった。
 狩りをしているとき、たまに呆気なく倒れるコンプレがいて、そのときもしかしたらとは思っていたけど。
 もしかしたら当てる場所によってダメージ量が違うんじゃないかって。

 今の戦いと眼人さんの言葉で確信したわ。
 マナの戦いにはダメージ量が異常なまでに高くなる弱点、つまり急所が存在する。

「それにユキさんも。お2人とも初心者とは思えませんよ」
「ありがと、眼人さん」
 由紀はほめられてうれしそうに返事をした。
「あ、僕のことは眼って呼んでいただいて構いませんよ。眼人って言いづらいですからね」
「わかりました。それじゃあ眼さん、そろそろ手加減はやめてくれません?」
 眼さんは明らかに手を抜いてい戦っていた。
 隙があっても小さな隙なら攻めてこないもの。
「ホント、初心者とは思えませんね。普通は見破られませんよ……」



肩ならし    progress by MIKI

「おらぁ!」
「うりゃ!」
 俺は走り込んできた迅の剣を弾くため全力で剣を振った。
 迅も俺に致命傷を与えようと勢い良く剣を振りぬく。
 互いに渾身の力をこめた剣は、キンッという大きな金属音をあげて衝突した。
「「うっ……!?」」
 剣の衝突によって生じた衝撃はそのまま俺と迅に伝わり、俺たちはその衝撃を受けて後方に吹っ飛んだ。
 俺はなんとか体勢を立て直して足から着地した。

 ほこりを払いながら前方へ視線を戻すと、10メー トルほど先で迅が倒れていた。
「ださっ!」
「人間誰でも転ぶことはあるっつうの」
「だっさ!!
「うっせ!!

 とまぁ、2分ほど戦ったわけだがまるで決着がつかん。
 互いの攻撃がダメージを与えることはほとんどなく、当たったとしてもかすり傷程度。
 まぁ初めのうちは肩ならし、準備運動も兼ねた様子見だから仕方ないんだけど。
 だが様子見も飽きた。エンジンも暖まったことだし、そろそろ本気で仕掛けるか。

「お、やる気だな」
 まだ何もしていないのに、迅は俺が考えたことを聞いたかのようなことを言う。
「まだ何も言ってねェぞ?」
「目ェ見りゃわかる。おまえの目がマジな目に変わったからな」
「そうかい」
 目は口ほどにものを言うってやつか。そういう迅も目の色が変わってやがる。
 こんな肩ならしもう十分、そうだよなぁ、迅。




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