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第24話  事件発生    progress by AMI



 ホワイトウィンドウとのユニバトから3日ほどたったころ事件は起きた。
 私と由紀はいつものように狩りをすませ、くろさんとはなちゃんを誘って隣町にある浜辺で遊んでいた。

 つい最近見つけたこの場所は、白い砂浜に青い海が映えるリゾート地のようなぜいたくな場所。
 町の1辺をしめるこの浜辺はその面積の広さのため、いつ来てもたいてい空いている。
 最近私たちの間では、ビーチバレーをしたり、海水浴をしたりするのがブームになっている。
 今も水着に着替えて遊び終わったところだ。
 上からTシャツを羽織って、波にうたれながらおしゃべりをしていた。

「ねェねェ、みんなは好きな人とかいるの?」

 はなちゃんのこの一言も事件といえば事件だった。
 同性が4人も集まれば当然、修学旅行の夜じゃなくてもこんな話題が飛び出してくる。
 私の経験上、それは分かり切っていることだ。
 だけど私はこの手の話に疎く、できれば触れたくない話題だった。

「アタシはいるよ、気になる人」
 いち早く答えたのは由紀。
「誰誰?アタシの知ってる人?」
「うん、ハヤトくん」
「え、ハヤト?あれのどこがいいの?」
 隼人くんをあれ呼ばわりするはなちゃん。
 ひどいなぁ、隼人くんはいい人だよ。なによりやさしいしね。

「で、アミちゃんは?」
「え゛、私……?」
 由紀はこの手の話が好きだから、いっそ2人で語り合っててくれれば助かったんだけど。
 どうもそうはいかないらしく、順番は私の方へ回ってきた。
「何?そのめんどくさそうな声」
「あ、わかる?」
 どうも私は気持ちが声に出やすいらしい。
 そんな私の気持ちをはなちゃんは感じ取ったのだろう。
 私って嘘とか下手なのかな。ちょっとショック……。

「こらこら、話をそらさないの」
 で、逃がしてもくれないわけね。
「誰か好きな人いるんでしょ?はけ」
 ときどき思うけど、はなちゃんってちょくちょく口調が恐くなるのよね。
 眼さんがいると特に。

「お前ら、そこ退けよ」
「はなちゃん?」
「アタシじゃないよ?」

 私ははなちゃんが声を低くして言ったのだと勘違いしていた。
 はなちゃんの言葉を聞いて「じゃあ誰よ」と周囲を見回す。
 私たちはすぐに、後ろに人が立っていることに気が付いた。
 そこには同じユニマークを浮かべた計3人の男女が立っていた。

「誰かの知り合い?」
 はなちゃんの問い掛けに、私たち3人は揃って首を横に振った。
「じゃああんた達誰?」
「いいから退けよ、ぶっ殺すぞ」
 なんか口が悪いなぁ。
「バッカじゃない?そこらじゅう空いてんだからあんたたちが移動しなよ!」
「いいから退け、チビ!」

 私たちに絡んできた男の1人はそう言うと武器を取出し、無武装のはなちゃんを切り付けた。
 防具も武器もないはなちゃんは一瞬にして倒されてしまった。
 それを見た私たちはすかさず立ち上がる。

「いきなり何するのよ!?私たちが何かした!?」
 相手をにらみつけながら由紀は叫んだ。
「アタシにあやまれ!!」
 倒されながらも叫び続けるはなちゃん。
 私とくろさんも2人のように叫びはしないものの、警戒して神経を尖らせていた。

「やっちまえ」
「おう!」
 リーダー格の男に指示され、もう1人の男が腰のホルダーから銃を抜いた。
 男は私たち3人に向けて容赦なく引き金を引く。
 初弾はなんとかかわしたものの、足場も悪くそう何度もかわせる状態ではなかった。
 案の定、数回の攻撃で私たちは直撃を受け、病院に送られた。



亜美からの呼び出し    
progress by MIKI

 俺は打倒月に燃えながら、いつものように狩りに没頭していた。
 しかも今日は軽いイベントが発生している。

「よっしゃ、1000匹いったぞ!」
「甘ェ、俺は1002匹だ!」
 俺はたまたま狩り場で遭遇した迅と狩り対決をしている。
 ようするにどっちが早く狩りをこなせるかって勝負だ。
 今のところ2匹差で俺が勝ってるみたいだな。

 まぁ相手は迅ごとき、勝って当然だ。

 俺も迅も時間が経つにつれて徐々にヒートアップしていき、
 しまいには狩りじゃまず使わないスキルまでフル活用しはじめた。
 そして狩りの熱がオーバーヒートし、コンプレが可哀相な状態になりはじめた頃、
 頭の中に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

『ミキ、ちょっといい?』
『……ん?アミか?』
 声の正体は亜美からのプライベートメッセージだった。
 亜美の声は普段より静かで、なにか重たい雰囲気をかもしだしていた。
『私たち、ちょっと問題に巻き込まれちゃって……。それで話を聞いてもらいたいんだけど』
 問題?なんだ問題って。俺は今忙しいんだ。
 会話なんかしてたら迅に負けちまう。
『悪いけど後にしてくれ』
『………』

 俺の言葉に対して亜美からの返答はなかった。
 OKなのかと解釈し、狩りに集中しはじめた頃、亜美ではなく由紀から返答があった。
『いいから、今すぐ広場に来て!』
『ユキ?わ、わかったよ……。ちょっと待ってろ』
 由紀の気迫におされた俺は仕方なく狩りを切り上げることにした。
 自分に集るコンプレを一掃し、俺は剣を腰におさめた。

 由紀の声、あれはたぶん怒ってた。
 亜美の声もいつもと雰囲気が違ってたし。
 いったい何があったっていうんだ。

「おいリー、どうしたんだ?」
「知ねェよ。アミたちがなんかに巻き込まれたらしくてさ。戻ってこいってうるさいんだよ」
「なに、アミちゃんが困ってるのか!?
 なんだよ、迅のやつ。亜美の名前を聞いたとたんに怒鳴りやがって。
 こいつ、マジで亜美のことが好きなのか?

 迅は周囲のコンプレにとどめをさし、俺の肩をつかんだ。
「で、アミちゃんは今どこにいるんだ!?
「あ?広場に来いって言って」
「じゃあ広場だな。リー、先にいくぞ」
 俺が言い切る前に場所を判断した迅はそう言うと、あっと言う間にその場から姿を消した。

 迅をこのまま放っておくと亜美が危険そうだな。
 仕方ない、俺も広場に戻るか。




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