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第25話  宣戦布告    progress by MIKI



 広場にワープしてすぐに亜美たちを発見できた俺は、
 連中に連れられて町外れの人通りの無い路地に移動した。
 なんでも他人には聞かれたくない話なんだそうだ。

 とか言いつつ迅は付いてきてんだけどな。

「で?何があったんだ?」
「それがね……」

 それから俺ははなと由紀の怒りを聞きながら、そのときの状況を聞かされた。
 落ち着いて話す亜美とくろのおかげで、なんとか状況を理解することができた。

「つまり、遊んでたところをいきなり襲われたんだな?」
「うん」

 暴れるはなと由紀を抑えながら問い掛けたところ、亜美は首を縦に振った。
 そういうヤツってたまにいるんだよな。
 目的は知ったこっちゃ無いが、連中は突然無関係のプレイヤーに襲い掛かってくる。
 いわゆる無法者ってやつだ。
 そういう連中が売ってくるケンカをいちいち買ってたら切りが無い。
 やり返したらまた仕掛けてくるからな。

「復讐はあきらめろ。やりあえば向こうの思う壺だ」
「「えぇー!?」」
 由紀とはなは声を揃えて不満を漏らした。
「あたしたち訳もわからないまま攻撃されたんだよ!?」
「ミッキーはアタシたちのマスターでしょ!?あいつらに仕返ししてよ!!」
「お前マジで言ってんのか?仲間がやられて黙ってるのかよ!?」
 はな、由紀、そして迅までも次々に抗議の言葉を発した。
「仕方ないだろ。個人でどうしても仕返ししたいってんなら止めはしない。けど、ユニとして動いちまうと色々面倒なんだよ」

 組織ってのは面倒なんだ。
 ユニのマスターである俺が仕返しに行ったら相手も組織で動きだすだろう。
 そうなると個人対個人とは比べものにならないくらい面倒なことになる。

「ならうちが蹴りつけたげようか?」
「月……」
 どこからともなく突然現われた月。
 それを見た由紀たちは歓声をあげて月に駆け寄っていく。
「待てよ月、お前が出てっても同じだ。マスターやサブマスが簡単にケンカを買っちゃまずい」
「悪いけど、うちは友達をやられて黙ってる気はないよ」

 月の目がいつものふざけた目じゃない。
 声のトーンも落ち着いてるし、目付きはマジだ。
 こんな月を相手にしたら相手は瞬殺だぞ。
 それに月だけじゃない。はなや由紀はもちろん、静かに傍観している亜美やくろも目が笑っちゃいない。
 こいつら、きっと俺が何を言っても止まらないだろうな……。
 ……仕方ないか、俺がこいつらと同じだったらやっぱり仕返しを考えるもんな。

「わかった。とりあえず俺が話をつけてくるから、月はハヤトたちを集めておいてくれ」
「……しゃーないね。任せたよ?」
「おう」
 月は渋々ながらも身を退いてくれた。
 悪いな、月。マスターとしても個人としても、お前に任せるわけにはいかないんだ。
「アミ、お前は俺を連中のところに案内してくれ。顔は覚えてるだろ?」
「うん」
 話をつけるのに大人数で圧力をかけるのは危険だからな。
 一触即発の場面を避けるなら少人数の方がいい。
 それに相手が少人数なら大人数でいくとまるでこっちが悪者になりかねない。
 2人くらいで行くのが妥当だろう。

「よし。それじゃあ後で集会所で落ち合おう」
「「了解!」」
 俺は亜美を連れて町を出た。

 亜美の話じゃ、襲われたのは隣町ルナサイドの浜辺らしい。
 ルナサイドは拠点になりにくい町であるため、いつも人口密度が低いのが特徴だ。
 そして最大の特徴は無駄に広い浜辺だな。
 夏には色々なイベントが開催されるため、何もない町だが誰もが来たことのある町でもある。


 町を出て5分ほど俺たちはルナサイドの町に入った。
 ルナサイドに入った俺たちはすぐに連中の捜索に取り掛かる。
 浜辺を歩きながら周囲をキョロキョロと見回し連中を探す亜美。
 しばらく進んだところで亜美は静かに脚を止め、服のそでをつかんで俺を止めた。

「いたのか?」
「うん……。あの人たち……」
 亜美の目が示したのは、がらの悪そうな男女の入り乱れた集団だった。
3人って言ってなかったか?」
「増えたみたいね……」
 俺の目が確かならどう見ても30人はいる。
 それも全員が同じユニのマークを身につけている。
 何となくわかったぜ、連中の正体。

「ん?なんだあいつら」
 集団のなかの1人が俺たちに気が付き、それにつられて集団全員がこちらを向きはじめた。
 何見てやがると言わんばかりに眼を付けてくる連中の中で、1人の男が亜美の存在に気付いたようだ。
「あの女、さっきのやつじゃないか?」
「あー、確かあんな顔してたな」
「キャハハ♪なに?彼氏に泣き付いたわけ♪?」
 亜美の顔を見て反応したのは3人だけ。
 どうやらこいつらがケンカを売ってきたらしいな。

 俺は自分の腕で亜美をかばいながら連中をにらみつけた。
「なんだ?うちの者になんか用か?」
 集団の奥から現われた他にはないオーラを持った男が、俺をにらみかえしながら言った。
 どうやらヤツがマスターらしいな。
「そこの3人に用がある。少し話をさせろ」
「どうせ仕返しだろ。仲間に手を出されるのを黙って見てると思うか?」
「勘違いすんなよ。そいつらが売り付けてきたケンカを買ってやるっつってんだ」
 妙な仲間意識持ちやがって。
 他人には手を出しといて、仲間が手を出されるのは許さないってのか。

 ふざけてやがる。

「お前ら、ユニの仲間なんだろ?そいつらに仕返しされるのが嫌ならそれでもいい。個人同士のちんけなケンカじゃなくて、組織同士の潰し合いをしようぜ」
「つまりユニバトで決着を付けようってんだな?」
「そういうことだ。今から役所に申請してくる。近いうち決着を付けてやるから待ってろ」

 俺は振り返り、亜美を連れて歩きだした。
 その直後、
「ミキ!後ろ!」
 亜美が叫ぶと同時に背後に急接近する3人の声が聞こえてきた。
「そんな手間はいらねェよ」
「キャハハ!」
「今ここで負かしてやる!」
 砂浜を走る音と踏み切る音、それに声の大きさの変化から連中の位置は予想できる。
 俺は剣を取出し後方に構えた。

キン、キキンッ!

 予想は的中、背後に構えた剣は銃弾を切り裂き、2人の剣を受けとめた。
 背後から情け容赦なく仕掛けてくるか。しかも3人がかりで無防備な相手に。
 叩きがいがある連中だ。

「焦るなよ、俺たちだってユニバトの日まで待ってやるんだ。てめェら全員、ユニバトで叩き潰してやるから待ってろ。特にお前ら3人、びびって逃げんなよ?」

 俺は連中に背中越しの圧力をかけ、2人の剣が俺の剣から離れるのを感じて再び歩きだした。
 さすがに連中もそれ以上仕掛けてはこず、俺は亜美を連れてルナサイドを出た。




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