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第50話  自動追尾システム    progress by MIKI



 たくっ、どこ行きやがった。
 この町さりげにでかいからな。
 はぐれたヤツを携帯も無しで見つけるのは一苦労だ。
 赤井と別れて探そうにも、それじゃこいつともはぐれちまうし。

 あぁ、全く面倒なことしてくれやがって。
 沙耶っちめ、自分の立場を理解してんだろうな。
 自分がやられたら失格だって自覚してくれ。

「つうかこの競技、観客が学校じゃ誰も観てないんだよな」
「そりゃそうだろ。今ごろ気付いたか、バカ」
「なんだと……!」

 無言で捜し回るのもアレだから話し掛けてやったのに。
 バカ言いやがって。
 やっぱこいつとのチームは精神的にもたないな。
 あぁ、早く終わらせて解散したい。

『えーと、2Fの赤井くん、神楽くん?誰も観てないってのは間違いよ』
「「……!?」」

 俺たちは突然聞こえた声に驚き、走る足を止めて振り返った。
 が、そこには誰一人人はいない。
 けどあの声には聞き覚えがある。
 この競技を仕切ってたあの生徒会の女子だ。

『キョロキョロしたって誰もいないよ。私は町のあちこちに取り付けたカメラであなたたちを観てるんだから』
 カメラ……?
「神楽、アレのことみたいだぞ」
 そう言って赤井は民家の屋根を指差した。
 見ると、確かにそこには監視カメラのようなものが取り付けられていた。
 ついでに並んで取り付けられたスピーカー。
 声はアレから聞こえているらしい。

『もうわかってると思うけど、教室の観客はそのカメラの映像で競技を観戦してます』
「なるほどね。俺たちと会話してるってことは、マイクもあの辺りにあるんだな」
『いえ。マイクはあなたたちの胸の辺りに取り付けました』

 ……は?


 ……うおっ!?
 マジでついてやがる……。
 いつの間に取り付けやがった。

 恐るべし、わが校の生徒会……。

 でも、観客が観てると聞いて燃えてきたぜ。
 ぜってェ負けられねェ。

「赤井、このままじゃらちがあかねェぞ」
「まぁな。けどどうする。別れて探しても問題は残るぞ」
「探さねェ……ってのはどうだ?」
 俺は思い切った作戦を提案してみた。
「攻撃は最大の防御……か。いい案だ。お前と別れられるならお前の案にでものるぜ」
 言いたかないが気持ちは同じみたいだな。

 俺たちはいつものように嫌味を言い合って、それぞれ別の方向に向かって走りだした。



恐るべし、生徒会    progress by HAYATO


『うっそ!?2Fは何を血迷ったのか、ディフェンダーの2人まで別行動に……。さすがにこれは無謀なんじゃないかしら』

 どうやら生徒会は実況と参加者との会話を使い分けてるみたいだね。
 今の実況はテレビ中継用、参加者には聞こえてなかったみたいだ。
 もし未来に聞こえてたら、マイクに向かって何らかの返答をしたはずだもの。

 未来たちの会話は聞こえてた。
 つまり永沢先生がアウトになる前に、他のクラスを全員失格にするつもりなんだろう。
 未来たちらしい作戦だよ。

 生徒会の子は無謀だって言ってたけど、俺はそうは思わない。
 2人以上で行動する意味があるのは、その中にターゲットがいる場合だよ。
 ディフェンダーが2人の場合攻撃力は増すけど、その間ターゲットが危険にさらされることになる。
 ターゲットが単独で動き回ってる今、優先すべきはターゲットに護衛につくこと。
 そのためにはディフェンダー2人がはぐれてでも、ターゲットの早期発見が必要になる。
 今の実況でディフェンダーの安全を確保したって仕方ないんだ。

 最も、未来と赤井くんが同じ考えで単独行動にでたのかどうかは分からないけどね。
 2人とも単に相手を倒したいだけかも知れないし。
 むしろその可能性の方が確率は高いかな。
 問題は永沢先生の実力が未知数であること。
 下手したら即失格ってこともあり得るんだからね、2人とも。


「ねェアミ。なんでさっきからミッキーと赤井くんしか映らないのかなァ?」
「……そういえばそうね」

 テレビ中継で試合を観戦していると、由紀ちゃんがふとそんな疑問をもらした。
 確かにさっきからテレビに映るのは未来と赤井くんばかり。
 町中のカメラに映る映像が変わり変わり映し出されるけど、映るのは常に未来か赤井くんだ。
 まるで2人のみを追従するように、テレビはカメラの映像を映し出している。

 由紀ちゃんと亜美ちゃんの会話を引き金に、2Fの教室はその謎に関する会話で騒めき始めた。
 そんな騒めきを静めたのは、生徒会に所属している男子生徒だった。

「生徒会のパソコンが映像を自動追尾させてるんだ」

 その言葉にクラス中が注目し、あっという間に教室内は静かになった。
 クラスの全員が「続きを話せ」という空気を作り出す。
 その男子生徒はそれを察知したのだろう。
 説明口調に言葉を続けた。

「パソコンがうちのクラスの参加者が映っているカメラを見つけて、自動で映像を切り換えてるんだよ」
「なんでうちのクラスだけを?」
 いち早く疑問を感じた女子生徒が生徒会の男子生徒に尋ねた。
「うちのクラスだけじゃないよ。チャンネルを変えれば別のクラスに注目した映像が見れる」


 つまりこういうことらしい。
 今うちのクラスのテレビが見ているチャンネルは、うちのクラスの参加者に注目したチャンネル。
 各チャンネルは各クラスに対応していて、チャンネルごとに追尾するクラスが違うらしい。
 いやはや、たかが球技大会にこんなシステムを導入するとは……。
 生徒会ってすごいね。

「ちょっと待って」
 男子生徒が話しを終えた直後、亜美ちゃんがそう言って男子生徒に問いかけた。
「じゃあなんでミキと赤井くんしか映らないの?先生はどうなってるのよ?」
「それは多分カメラに映ってないんだと思う。カメラが一台でも捉えればテレビに映るはずだから」
「つまりカメラの死角になる場所で動かずに隠れてるってこと?」
「そういうこと(いたるところにカメラがあるはずだから、カメラに映らないで隠れるなんて不可能なはずなんだけど……)」

 どうやら先生もうまく隠れてるみたいだね。
 あんなに威勢よく飛び出した先生が隠れてるなんて意外だった。
 だけど下手に動かれるよりその方が安全だよ。

 後は早めに未来たちが先生に合流できればひと安心だ。




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