←トップに戻る     ←第45話に戻る     第47話に進む→





第46話  先手必勝    progress by MASATO



 聞いた話しじゃサッカーとバレーは無事に準決勝進出を決めたらしい。
 準決勝以降の試合は午後、謎球の後に行われるらしいから、ひとまずは一段落ってところか。

 今校庭じゃテニスとドッジボールが進行中らしい。
 テニスはダブルスに田口が出るらしいな。
 あいつがいりゃ十分だろ。
 シングルスは知らん。

 ドッジはなんかヤバい相手に当たったって、助っ人探して走り回ってたな。
 神楽のやろうが助っ人を引き受けたって聞いたから、助っ人の話しは蹴ってやったけど。
 まぁ、負けることはねェだろ。
 負けてたら腹抱えて笑ってやる。

 体育館ではバドミントンとバスケをやってるが、バドミントンは知らん。
 確か伊藤がシングルスに出てたはずだが、どうも順調に勝ち進んでるみたいだった。
 仮にヤバくても俺に助っ人は無理だ。
 やったことねェし。

 バスケも助っ人を探してやがった。
 どうも組み合わせの問題で決勝まで常に3年が相手らしい。
 問題の3Fと当たるのは決勝みたいだから期待外れだが、決勝前に肩慣らししとくのもいいだろ。
 第一、謎球なんて得体の知れない競技だけじゃ退屈だからな。

「さぁて、せいぜい楽しませてもらおうか」
 気合い入るぜ。
 バスケなんかやるのは中学以来だからな。
 3年だろうがなんだろうが手加減しねェぞ。
「なぁ。俺、フリーポジションでいいだろ?穴はお前らで埋めてくれよ」
「まぁしゃあないな。助っ人頼んだのはこっちだし」
「サンキュー。得点力下げるようなマネはしねェからよ」

 嫌いなんだよな、ポジションに縛られるのって。
 常にボールを追い掛けてるガキみたいなバスケになるけど、その方が数倍楽しめる。
 やりたいことやらないで我慢するなんてバカみたいだろ。
 俺はやりたいことやって勝たせてもらう。

「へい!」
 ジャンプボールはうちのチームがもらった。
 それを見た瞬間に俺は走りだし、掛け声とともに手を叩いた。
「行け、赤井!」
 ボールを手にしたチームメイトは俺の声に応じ、迷わず俺にバウンドパスを出してくれた。

 先手必勝の速攻体勢だ。
 数人の相手メンバーと仲間が俺に続いて走っている。
 そんな中、相手の一人が俺の前に出て速攻を止めにきた。

「抜かせねェ!」

 気合い十分に腰を落とし、両手を広げてドリブルのコースをふさいでくる。
 ゴールまではまだかなりある。
 どうする……って、がら空きだぜ、兄さん。
 俺はドリブルの流れのまま、ボールを前に送りだした。

「なっ……!?」

 ボールはディフェンスの股の下でバウンドし、相手のの背後で腰の高さまで上昇する。
 股の下を抜かれた際の反応で軽く手を下ろしたディフェンス。
 これはディフェンスの意識が薄れた証拠だ。
 その隙をついて俺はディフェンスを抜き去り、その先で待つボールを手に取ってドリブルを再開した。

 もうゴールが近いな。
 先制攻撃だ、派手に決めてやるか。

「赤井、決めちまえ!」
「おうよ!」

 俺はボールを右手で掴み、そのままリングに向かって飛び上がる。
 リングが額の前まで迫ったところで、右手のボールを勢い良くリングにたたき込んだ。
 バスケの醍醐味、ダンクってやつだ。

 さぁ、ガンガン行こうか。



由紀のサーブ
    progress by HAYATO


「ゲーム2F、5‐4!」
 二人の間を射ぬき、ショットが決まったところで、こっちのゲームがカウントされた。

「やったねハヤトくん!あと1ゲームでアタシたちの勝ちだよ」
「うん、そうだね。頑張ろう」
「うん」

 何だかんだで俺たちはゲームセットに王手をかけた。
 由紀ちゃんは相変わらずだけど、少しずつショットの成功率が上がってきている。
 今現在で1割くらいかな。
 バックハンドとフォアハンドで若干の差はあるけど、さほど大きな差はない。
 スマッシュやロブ、ドロップに対する対応も徐々に精度が上がってる。

 そんな中で唯一苦手なのはサーブかな。
 まだ2回しかサーブ権が回ってきてないけど、全打球アウトかネットで、サーブが一度も決まっていない。
 由紀ちゃんには悪いけど、由紀ちゃんがサーブのゲームは落とすと考えたほうがいい。

「ユキ、次はあんたのサーブよ?」
「「えっ?」」
 ギャラリーの女の子が由紀ちゃんに向かって発した言葉に、俺と由紀ちゃんは戸惑った。
「次、アタシのサーブ!?」
「そうよ。さっさと決めちゃいなさい」
 彼女は途中から観戦してたようだね。
 この状況を理解できていないみたいだ。
 彼女的には「あんたのサーブで決めちゃえ」って言ってるんだと思うけど。

 この試合、まだまだ長引きそうだね。

「いくよ、ハヤトくん」
「オッケー。落ち着いていこ」

 由紀ちゃんのサーブはどういうわけか、ジャンピングサーブばかり。
 そして今回も当然入らない。
 打球は大きく反れてドッジボールのコートの方に飛んでいった。

 由紀ちゃんがわざわざ難しいサーブを選ぶ理由はわからない。
 ……もしかして相手の二人のせい?
 彼らがジャンピングサーブばかり打つもんだから、サーブの打ち方を知らない由紀ちゃんはそれしかマネできないのかも知れない。
 だったら……。

「ユキちゃん、下から打ち上げてみて」
 俺はラケットを素振りして言葉の意味を行動で示した。
 下から打ち上げればボールは山なりに飛んでいく。
 当然コントロールもしやすいし、ネットにも引っ掛かりにくい。
「でも、そんなサーブじゃ狙い打ちされるよ……?」
 確かにこのサーブは由紀ちゃんの言うように、スピードが無い分、打ち返すのは容易になってしまうのが欠点だ。
 だけどこの際仕方ない。
「そこから先は俺がなんとかするよ」

 サーブさえ決れば先が見えてくる。
 せっかく王手をかけたんだ。
 一気に決めてやる。



由紀からのメール
    progress by AMI


「勝者2F、準決勝進出!」

 これで午前中の試合は終わりか。
 今のところは順調ね。
 さすがに疲れたわ……。

 あ、由紀からメールが入ってる。
 えっと……、
「ミッキーの意思に任せようと思って、少し遠回しに催促しといたよ」
 か……。
 メールが届いたのは11時2分で、今は11時27分。
 まる一試合分時間が経ってるじゃない。
 近くに未来の姿なんて見えないし。

「ねェ、試合中にミキ来てなかった?」
「神楽くん?来てないよ。確かドッジボールの助っ人してるって聞いたけど?」
「そ、ありがと」

 なるほどねェ。
 そっかそっか。
 由紀たちの応援にでも行こうかな。




←トップに戻る     ←第45話に戻る     第47話に進む→

inserted by FC2 system