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第8話  顔合わせ    progress by MIKI



 しばらく雑談をしながら待っていると、広場の中央に見覚えのあるヤツが現われた。

「ミキ、あれ……」
「あぁ、現われたな……」
 俺は
3人を残してヤツのもとに向かった。
 ヤツの名前は月、うちのユニのサブマスターだ。

 俺は月に気付かれないよう、人の混みあう広場を人影に隠れながら進む。
 月の背後
5メートルのところまで進んだところで俺は右手に剣を装備した。
 そして隠れるのを止め、人混みをかわしながら全力で月に駆け寄った。
 そのまま、月に気付かれないうちに俺は月に切り掛かる。

ガギッ!

 背後から切り付けた俺の剣は、月がとっさに取り出した日本刀に防がれ停止した。

「くそっ!」
「リー。そんなんじゃ、うちは仕留められんよ」

 互いに武器をしまい体勢を整える俺たち。
 俺たちは互いに顔を見合わせ、そして同時にふきだした。

「あはは、どしたんよ?」
「ちょっと付いてこい。会わせたい奴らがいるんだ」
「会わせたい?うちに?」
「あぁ」
「まさか……両親?リーあんた、うちのことをそこまで……」
「バカ言ってないで来い!」
「あ〜い」
 こいつのバカに一々付き合ってたら夜が明けちまう。
 俺は月を連れ、広場の端で待つ隼人たちのところへ向かった。

「なに?ナンパでもしたの?」
 亜美たちを見るなりふざけた事をぬかす月。
「俺たちのクラスメイトだよ。うちの新メンバーになってもらおうと思ってんだ。構わないだろ?」
「ええよ。2人のクラスメイトならいろいろ楽しめそうやし」
 楽しめそう……ねェ……。
 間違った楽しみ方しなきゃいいけど。
「んと、アミちんとユキちんね。うちは夜月、一応ハチのサブマスやから仲ようしてください。リーの下につくと色々大変やけど、一緒にガンバロね」
「「はい」」

 この女……。お前は誰が上でも関係ないだろ。やりたいことやってるだけなんだから。
 それに月の上ってことのほうが大変だと思うぞ。
 なにせ月はありえないことばっかりするし。
 マスターとしてはサブマスの行動の責任をとらにゃならんのだ。
 頼むから問題だけは起こさないでくれ。

 それに俺より強いのが一番の問題だ。
 なんとしても月に勝って、真のマスターになってやる。

「リー、ちょいと」
 俺の肩を軽くたたきながら少し離れたところに誘い出す月。
 俺は何だか分からないまま月の誘いに乗り、雑談する隼人たちから少し離れた。
「なんだよ?」
「あの子ら、あんたのクラスメイトなんやろ?」
 俺が月の問い掛けにイエスと応えたのを見て、月は話を続けた。
「初心者の新メンバーはサブマスのうちが面倒を見る決まりやん」
「あぁ、そういえばそんな約束したな」

 もう
2年も前の約束だからすっかり忘れてたぜ。
 強いくせにマスターをやりたがらないから雑用を押しつけたんだった。

「けど、あの子らはあんたのクラスメイトやんか。どうするん?約束どおり、うちが面倒見てええのん?」
「あぁ、よろしく頼むよ」
「リョーカイ」
 月の話はそれだけだったらしく、話を終えた月は3人のもとへ戻っていった。

 だが、月は戻った直後にさっそく問題を起こしやがった。

 月の接近に気付かず、雑談を続ける亜美と由紀。
 そんな2人の胸元に月は手を伸ばす。
 その素早さたるや稲妻の如し、気が付いた頃にはすでに手遅れだった。

「「きゃっ!?」」
 突然のことに、俺を含めた全員が何もできなかった。
 だが、驚きによって硬直する俺たちをよそに、月の行動はさらにエスカレートする。
 あろうことか、2人の胸を揉みはじめる月。
 硬直が解けた俺は全力で月に蹴りかかった。

 しかし、思い切って跳び蹴りを仕掛けた俺はいとも簡単に交わされ、たまたま進行先にいた隼人に直撃した。
 吹っ飛ぶ隼人と悲しい気持ちで着地する俺。

「いたそー」
 悪い隼人。でも隼人に謝るのは後だ。
 先に止めなきゃならないヤツがいる。
「お前何やってんだ!?」
「いやぁ、2人が女かチェックしとかんと。うち、女装した男の面倒なんか見たないもん」
「言い訳の前に手を止めろ!」
 今だに2人の胸で手を動かしていた月を俺は停止させた。
 つか2人も離れろよ。素直に触られやがって。

「ま、2人が女だってことは分かったし。楽しめそうやよ」
 女だってことが分かった?今の変態行動は2人が女かどうかのチェックだったってのか。
 確かに胸を触れば体が女かどうかは分かる。
 2人の体は間違いなく女の体だし、実際中身も女であることは確かだ。
「外見だけなら簡単に偽れるだろうが。体が女だからって中身まで女だって証拠にはならないっつうの」
「大丈夫。触られたときの反応が女の反応やったから」
「そうなのか?」
 同性に触られたときの反応ってどんなんだよ。
 ってか、確認するなら他に方法があるだろ。
「ま、女やってことは分かったし、これからよろしくねん」
「「よ、よろしくお願いします……」


 大丈夫かな、
2人とも……。




 亜美たちの本格的な狩りは明日以降に行うことになる。
 そのため今日は面倒を見なくていいと分かった月は、自分の狩りをするために町から出ていった。
 また、サブマスの月に確認をとったことで亜美たちの加入が正式に決まったため、
 隼人は2人のユニ登録申請を行うために役所に向かった。

 残った俺たち3人は再びメンバー探しを再開、広場を張り込んで残りのメンバーが現われるのを待った。
 そして待つこと3分、2人目のメンバーが現われる。

「おーい、幽。こっちだこっち」
 俺は広場の中央に現われたメンバーの幽を気付かせるために大声で叫んだ。
 俺の声に気が付いた幽は小走りに俺たちのもとに駆け付けた。
「なんスか、急に呼び出したりして」
「悪いな。ちょっと紹介しておきたい奴らがいてさ」
「後ろの彼女達スか?」
 俺より一歩下がって幽を見ている亜美と由紀。
 幽は体を傾け、後ろの2人を覗き込みながら言った。

「アミとユキ。現世での俺のクラスメイトで、さっき正式にうちへの加入が決まった新メンバーだ」
「「よろしくお願いします!」」
「あ、こちらこそ」
 幽は2人に挨拶をすると、順に2人と握手を交わした。

 幽は隼人と同時期にうちに加入したうちの主戦力の1人だ。
 キャラクター名は幽零っていうんだけど、みんなめんどくさがって幽って呼んでる。
 俺や月ほどじゃないが実力はハチの中でもピカ一だ。

「マスター。彼女達、初心者なの?」
 2人が装備している武器を見た幽はそれを感じ取ったのだろう。
「あぁ。今日マナデビューしたばかりだよ」
「なにマスター、メンバーが足りないからって未経験のクラスメイト引きずり込んだの?」
 こいつもまた人聞きの悪いことを言いやがって。
 幽といい月といい、どうしてうちにはこう捻くれたヤツが多いのかね。
「たまたまだよ。マナをやりたいって言いだしたのは2人の方からだ」
「そうなんだ。俺はてっきり、メンバー不足で自棄になったのかと」
「ちゃうわ」

 確かに自棄にもなるくらいにメンバー不足は深刻な問題だけどな。
 でも、亜美たち2人が加入してくれたおかげで、うちのメンバーは合計9人になった。
 これなら俺たちの負担も大分軽くなるぞ。
 月に2人の面倒を見させることになるんだし、ついでにミッチリしごかせるか。




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