←トップに戻る     ←第11話に戻る     第13話に進む→





第12話  想像力しだい    progress by AMI



 そう言いながら幽さんが取り出した新しい武器は、私が見たこともない特殊な武器だった。
 一見、剣のように見えなくもないけど、よく見るとやはり違う点がある。
 剣をベースにしているようだが、剣の先には穴が2つ空いていて、
 本来つばに当たる部分には銃の引き金のような機構が設けてある。
 剣自体もヘの字型に曲がっていて、見ようによっては火縄銃のようにも見える。

「ハヤトくん、幽さんのあれは何ていう武器なの?」
 私は私たちの隣で戦いを観戦している隼人くんに訊いた。
「あれは幽さんのオリジナル武器だよ。幽さんはガンズブレイドって呼んでたかな」
「ガンズブレイド?」
「名前の通り、剣と銃を複合したような武器なんだ。武器を自分で作れるのは知ってるでしょ?」
「……知らないかも……」

 そんな話聞いたことないわ。
 私も由紀も、マナを始めた日に隼人くんにもらった武器を今でも使っている。
 強い武器はその内手に入るってことを月さんに聞かされてはいるけど、その入手法は聞いていない。
 コンピュータプレイヤーは武器なんか落とさないし、町で武器を売っているお店なんか見たことないし。
 隼人くんの言う、作るっていう方法で手に入れるのかしら。

「ハヤトくん、武器の作り方を教えてくれない?」
「うん、オッケー」



武器の作り方講座    progress by HAYATO

 みんな当たり前のように使っている武器だけど、
 これを売っているお店はマナの世界にはほとんど無いんだ。
 じゃあどうやって手に入れるのかって話だけど、答えは簡単。
 コンピュータプレイヤーを倒したときにドロップするから、それを拾ってしまえばいいんだ。

 ただ、ドロップする武器は武器の形をしていないってことには注意が必要だね。
 マナの世界には『武器の素』っていうアイテムがあるんだ。
 これはこぶし大の球体で、青い光を放つ宝石みたいなアイテム。
 コンピュータプレイヤーがドロップする武器は大概がこれだね。
 俺たちプレイヤーはそれを拾って、自分オリジナルの武器を作り上げていくんだ。

 作り方は簡単、例によってイメージを使うんだ。
 武器の素を手に持って、武器の完成形をイメージすれば、あら不思議、
 あっという間に自分の思い描いた武器の出来上がり。

 当然外見だけじゃなくて、攻撃手段も思いのまま。
 たとえば外見は銃なんだけど、引き金を引くと火が飛び出るなんてのもできるんだ。
 外見も性質も、すべてイメージが大切ってことだね。

 唯一制限がかかるのが攻撃力と重量。この2つはある枠の中で調節しなきゃならないんだ。
 武器の素にはあらかじめポイントが与えられていて、そのポイントを振り分けることで
 攻撃力と重量を調節するんだ。
 攻撃力を上げたければ攻撃力に、重量を軽くしたければ重量にね。
 つまり、攻撃力を重視すると重くなるし、軽くしすぎると攻撃力がいまひとつの武器になってしまう。
 何を重視するかはその人次第かな。

 あと、強いコンピュータプレイヤーほどポイント数の高い武器の素を落とすんだ。
 だから、強くなれば自然と強い武器が手に入る。

 ちなみに幽さんがはじめに持っていた大剣は攻撃力を重視して重量を無視したパワフルな武器だった。
 対してくろさんの武器は軽さを追求した速度重視の武器。
 これはカウンタースタイルのくろさん向きの武器だね。
 幽さんの新しい武器に関しては戦いを見てれば分かると思うよ。



決着    progress by AMI

 なるほど。私たちも狩りの中で何度も青い玉を見てきた。
 お店に持っていっても大したお金にならないからとっておいたけど、まさかそんなアイテムだったなんて。
 他にも緑の玉と黄色の玉をたまに拾うけど、あの2つも同じなのかな。

「行きますよ」
「うん、負けないよ」

 互いの動きに集中し、武器を構えた状態で静止したくろさんと幽さん。
 数秒の硬直の後、先に動きだしたのはまたしても幽さんだった。
 一気に間合いをつめ、くろさんの懐に飛び込んだ幽さん。
 腰の位置に構えたあの剣を、くろさんの左脇腹から右肩めがけて切り上げた。
 対してくろさんは今度もバックステップでそれをかわす。
 剣の先端がくろさんの脇腹をかすめ、胸の位置にまで上昇する。
 間違いなく外したと私は思った。

 だけど、そんな状態で幽さんが叫んだ。
「まだっスよ!」
 叫ぶと同時に指先の引き金を引く幽さん。
 すると、引き金付近が火花を吹いて銃声を上げ、剣の先端から銃弾が飛び出した。
「ガンズスラッシュ!」
 さらに叫んだ幽さんの動きは掛け声と同時に加速し、
 一度切り上げた剣の向きを変えて、今度は切り下ろしにかかった。

 先に飛びだしていた銃弾と切り下ろし、そしてまた新たに飛び出した銃弾、
 計3回の攻撃が同時にくろさんを襲う。
 だけど、絶対にかわせないほどの至近距離で攻撃されているにもかかわらず、
 くろさんは動揺もせずに剣を構えた。

「夢幻……神隠し」

 かろうじて聞こえる大きさの声でそう呟いたくろさん。
 するとどうやったのかは分からなかったが、くろさんは銃弾と斬撃をかわして幽さんの背後に移動した。

「勝負あり!」
「えっ……?」
 まだ決着がついていないと思っていた私は、月さんの判定に驚いた。
 そのすぐ後だった。
 攻撃を外した幽さんは、くろさんの方に向き直ることもなく倒れてしまった。
「勝者、くろ」
 月さんの言葉を聞いて、私は初めて状況を理解した。



防具の作り方講座    progress by MIKI

 俺は病院に運ばれていた幽と合流し、再び集会所に戻ってきた。

「ほら、お前らこれ使え」
 俺はそう言いながら素シリーズの玉を地面に転がした。
 素シリーズってのは武器の素、防具の素、スキルの素のことだ。
 俺はこれを亜美たちに渡すために町に戻ったんだ。

 武器の素に関しては隼人が説明してくれたらしいから、俺は残り2つの説明をしておこう。

 まず防具の素だけど、これは基本的には武器の素と同じだ。
 外見と重量、それから防御力を自分で決めるわけだな。
 ただこの場合の防御力は、武器の攻撃力とは少し違った設定をしなきゃならない。
 マナの世界での攻撃ってのは、剣や銃の物理的攻撃と、火や水を使った魔法的攻撃があるんだ。
 防具は両方のダメージを軽減する能力があるんだが、そこが少し厄介なところだ。

 物理的攻撃を軽減するには物理防御力に、
 魔法的攻撃を軽減するには魔法防御力にポイントを振り分けなければならない。
 その上重量にもポイントを振り分けることになる。この点は武器と同じだ。
 つまり武器同様、すべてが完璧な防具は作れないってことだ。

 ただ、物理防御力にポイントを振ると重さが重くなるってマイナスポイントもある。
 けど、だからって物理防御力を捨てるちょっと危険だ。
 なにせプレイヤーの通常攻撃はほとんどが物理的攻撃、
 これをすべてかわすほどの実力がなきゃ、そんなつり橋は渡れない。

 ま、自分の実力と相手の戦い方を見て考えるしかないだろうな。
 ここで物理防御力に大きなポイントを振らずにすむのが上級者ってことになる。
 うちのユニでこんなことができるのは月とくろくらいかな。
 悔しいけど俺にはまだ無理だ……。




←トップに戻る     ←第11話に戻る     第13話に進む→

inserted by FC2 system