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第19話  ポイント形式で重要なこと    progress by MIKI



 元々の戦力で言えばホワイトウィンドウは俺たちの敵じゃない。
 迅が入ったところでその戦力差は埋まりやしない。
 そう、今日の目的は下っぱどもの腕試し兼経験積みなわけだ。
 迅は俺が相手をするとして、残り9人は亜美や隼人たちに頑張ってもらおう。
 くろや月には悪いが、今日は2人の出番はない。
 試合後半になってうちが負けそうだったら働いてもらおう。

「ま、そういうことだから」
「ええよ。うちはアミちんたちの戦いを見てるから」
「私も構わないよ」
 月は強い相手がいないからやる気が無いんだろうな。
 くろにも許可はとれたし、せっかく用意してやった舞台だ、4人とも思う存分暴れちまえ。

「ミキ、私たちに任せて大丈夫なの?」
 なにやら不安そうな顔と声で亜美が話し掛けてくる。
 こいつの自信の無さも重傷だな。
「アミ、今日のお前は防具だって着てるんだ。お前の力なら勝てない相手じゃないぞ」
「そうかなぁ……。みんなの足を引っ張るのだけはやだよ」
「自信持てって。負けたって月やくろが取り返してくれる。それにこれは勝ち負けより、お前らに経験と自信を持たせるのが目的なんだから」
「う、うん……」
 ホント、重傷だな亜美のヤツ……。
「ま、お祭りみたいなもんだ。使命感なんか捨てて楽しめよ」
「ん、わかったわ。やるだけやってみる」
「おう」

 ま、亜美にはあぁ言ったが、当然負ける気なんかない。
 相手の親玉は元うちのメンバーだからな、負けたらいい笑いもんだぜ。
 脱退してからどれだけ力を付けたか知らないが、今日は勝たせてもらおうか。

「ねェ、相手の人たちはどこにいるの?」
 亜美は辺りをキョロキョロと見回しながら俺の肩を軽くたたいた。
 そういえば説明してなかったな。
「連中はずっとあっちの方にいるよ」
 俺はこの場の出入口の方を指差しながら言った。

 今いるこの場所はキャンプと呼ばれる安全地帯だ。
 両軍にそれぞれ用意されたキャンプには自軍メンバーしか入ることができない。
 また、ユニバトの戦闘で倒されたときはこのキャンプで復活することになる。
 このキャンプには薬屋も用意されていて戦闘の準備をすることができる。
 このキャンプ内だけは敵の攻撃を受けることはない。それがたとえ遠距離攻撃であってもだ。

「つまり、ホワイトウィンドウの人たちはあっちのキャンプにいるのね」
「そういうこと。お前も試合が始まる前に薬を用意しておけよ」
「うん」
 亜美は言われたとおり、出店風の薬屋に向かって小走りに駆けていった。


 あと2分くらいで試合開始か。
「よし、みんな聞いてくれ」
 俺はキャンプの出入口付近で手を叩きながらユニメン全員に聞こえる大きな声で注目を集めた。
「いいか、今日の試合は前回と同じポイント形式だ」

 ポイント形式の試合はユニバトにおいて最もポピュラーな形式だ。
 相手のメンバーを倒せばその階級差に応じたポイントが加算される。
 たとえば同階級の相手を倒せば3ポイント、1つ下の階級の相手を倒せば2ポイント、
 逆に1つ上の階級の相手を倒せば5ポイントが加算されるってわけだ。
 この獲得ポイントが最終的に多いユニの勝ちになる。

 階級ってのは平、サブマス、マスターの3つだな。
 つまりマスターの俺が敵の平を倒してもポイントは1しか加算されないが、
 逆に俺が敵の平に倒されると相手に7ポイントも加算されることになる。
 つまりマスターの敗北はユニにとって大打撃ってことだ。
 みんな、俺を守れよ。

 とまぁ、説明してるうちに試合開始の時間だ。
 空に立体文字でカウントダウンが始まった。
「よっしゃ、行くぞ野郎ども!」
「「おぉー!」」
 空の数字が0になると同時に俺たちはキャンプを飛び出した。

 俺は相手のキャンプに向かう途中で敵チームの先頭を走る迅に遭遇した。
「よっしゃ見つけた。端によるぞリー」
「おうよ」
 この場所はフィールドのど真ん中、つまり戦いの中心になる場所だ。
 今回は隼人たちがメイン、人数的に俺たちは端によるのがマナーってもんだ。
 俺と迅は小走りにその場から離れ、少し走ったところで足を止めた。

「ホント、何もねェ草原だな」
 迅の言うようになんの障害物もない、この場所から全員の姿が見渡せるほどだ。
「要するにお前の逃げ場所が無いってことだろ」
「そりゃお前だ、リー」
 だだっ広い草原で、俺たちは距離をとって武器を構えた。
 最近引き分けてばかりだからな。今日こそ俺の勝ち星を増やしてやる。

「「いく ぞ!」」
 俺たちは同時に地面を蹴った。



はなと眼の作戦    progress by HAYATO

「む?何のつもりだよ、はな、眼」
「お前らマスターだろ?相手が違うんじゃないか?」
 俺たちの目の前で立ち止まったはなちんと眼に、幽と俺は立て続けに問い掛けた。
 2人はユニを率いる身、なら当然相手は月さんやくろさんだ。
 他のメンバーを4人も連れてここで立ち止まるのはおかしいって。
 それに残りの3人が俺たちを抜いていったってことは、あの3人は月さんたちとやり合うつもりってことだ。
「普通逆じゃないか?」
「そうそう。うちに勝つ気なら23人で俺たち4人くらい捕まえないと」
 こっちは新人2人に平2人、自分で言うのもなんだけど一応下級戦力だ。

 そんな俺たちに主力をぶつけるようじゃ
「これも作戦ってやつですよ」
「そゆこと。主力に主力ぶつけるばかりが戦いじゃないでしょ」
 む?なぜか自信に満ちた顔で語る眼とはなちん。
 どうも何かあるらしいけど……、あの2人が作戦?
 眼はともかく、はなちんは作戦なんて考えて動くタイプじゃない。
 ハチゼロにいた頃から作戦を守って戦ったことなんて無かったのに。

「ハヤト、考えても仕方ないよ」
「幽?」
 俺の肩に手を置きながら幽は言った。
「月さんたちの心配なんかするだけ無駄でしょ?どっちかって言うと」
「……こっちの方がピンチだな」
「そういうこと」
 46で相手は全員俺や幽と同格と見ていい。
 対する俺たちは俺、幽、それに由紀ちゃんと亜美ちゃんの4人。
 確かにうちにとっては俺たちの戦いが一番の不安要素だ。
 俺たちがここでやられるようだとうちの勝利は怪しくなってくる。
「よし。今はこいつらに集中しよう」
「オッケー」
 俺と幽はそう言って武器を構え戦闘態勢にはいる。
 それを見た由紀ちゃんたち、それにホワイトウィンドウの連中も武器を構えて、
 場はいっきに重苦しい空気になった。

 さてと、どう戦うかな……。




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