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第26話  行動の真相    progress by MIKI



 町を出たところで誰かに呼び止められ、俺たちは脚を止めた。
 見るとそこには、バイクに寄りかかりタバコをくわえた迅の姿があった。
 カッコつけてんのか?タバコなんて吸って、スタミナに響くぞ。
「話は付いたのか?」
「まぁな。で、お前はこんなところで何してんだ?」
「集会所に行くんだろ?迎えに来たんだよ」
 なるほど。お前の魂胆が読めたぜ。
 ならお前の好意に甘えさせてもらおうか。

「アミ、バイクの後ろに乗せてもらえ」
「でも迅さん、いいんですか?」
「いいよ、そのために来たんだから」
「……じゃあ、お願いします」
 亜美はそう言ってバイクの後部座席に座った。
 そして当然のようにバイクの運転席に座ろうとする迅。

 俺はその迅を蹴り飛ばしバイクの運転席を奪い取った。

「何しやがる……!?」
「お言葉に甘えて借りてくぜ。サンキュー、迅」
「おい、待てよ……。乗せるのはアミちゃんだけで……」
 ふざけたことをぬかす迅をおいて、俺はバイクを前進させた。

 さすがにバイクの足は速いな。
 あっという間に集会所に到着だ。

 集会所にはすでに月たちが集まっていた。
 全員が落ち着かない様子で俺たちを待つ中、俺はバイクを小屋の裏に止めてみんなと合流する。
 その1分後、全力疾走で追ってきた迅も到着し、ようやく役者は揃った。
 全員が揃ったところで俺はルナサイドの浜辺で起こったことの一切をみんなに伝えていった。

「なるほどユニバトか」
 なぜか集会に参加し、話を聞いて納得している迅。
「イベントでならいくら潰しても構わんよね?」
「あぁ、思う存分暴れて構わないぞ」
 派手に暴れてもなんの問題もないユニバトを選んだのは徹底的に叩き潰すためだ。
 こういうとき月ほど頼りになるヤツはいないだろう。

 それに燃えてるのはなにも月だけじゃない。
 由紀たちに説明を受けた隼人も、迅やはなも異常なまでに気合いが入ってるようだ。
「リー、俺をハチゼロに入れてくれ。俺も戦いたい!」
「あたしも!やられっぱなしじゃ気持ちがおさまらないよ」
 決着の方法がユニバトであることが障害になるのは迅とはなだ。
 こいつらはハチゼロのメンバーじゃないからユニバトには出られない。
 そのことがわかっている2人はうちへの一時的な加入を申し込んできた。

「はな、お前は無理だ」
「なんで!?」
「お前肝心なこと忘れてるだろ。マスターはユニを抜けられないんだぞ?」
「あ……」

 マナの公式な組織であるユニは、そのマスターと切り離せない関係にある。
 マスターあってのユニということで、マスターだけはユニから抜けることができないんだ。
 マスターがユニを抜けることはユニの解散を意味する。
 ホワイトウィンドウのマスターであるはなはどう考えても今回の戦に参加することはできないだろ。

「んで、迅は俺が個人的に入れたくない」
「ふざけ!」
 なにがふざけんなだ。このユニのマスターは俺だぞ。
 すべての決定権は俺にあるんだ。
 誰がお前なんか入れるか。


 その日は月にユニバトの申請を任せ、俺たちはその場で解散した。
 いつものように夜道を家に向かって歩く俺と亜美。
 しばらく経って家までの道程を半分ほど歩いた頃、集会中もほとんど口を開かなかった亜美が静かに口を開いた。

「あ、あのさ……」
「ん?」
 どうも聞きづらそうに話しかけてくる亜美。
「なんでユキたちが頼んでたときは冷静に断ってたのに、浜辺に行ったら自分から怒りだしたの……?」
「そんなことをずっと考えてたのか?」
「まぁ……」
 呆れたヤツだな。
 不思議に思ったんなら集会所にいるときにでも聞きゃあいいのに。

「ユニのマスターとして、簡単にケンカを買うわけにはいかないだろ。だから一応止めたんだよ」
 俺は一息ついて続けた。
「それに相手は3人だって聞いてたからな。大人数で押し掛けたらまるでこっちが悪者みたいになるだろ」
「じゃあはじめから行く気だったの?」
「当たり前だろ。お前らがやられて黙ってられるかよ」
「そっか」
 亜美はホッと肩を撫で下ろした。
 この会話をはじめてからも力が入っていた亜美の肩から、この時ようやく力が抜けたようだ。

 大体、由紀やくろたちも連れて行ったら、それはどう見てもマスターとしての行動にとられちまう。
 マスターとしてはそういう安っぽい行動はユニに悪影響を及ぼすことになる。
 けど亜美と2人で行けば、それは友達をいじめられた友人としての行動になる。
 個人で仲間の仕返しを手伝うって話しならユニは関係なくなるからな。
 だから、由紀たちには悪いけどあの時はああ言ったんだ。
 最初から仕返しには行くつもりだった。

 緊張が解れた亜美は、今まで黙っていたつけを払うかのように、続けて話題を投げ掛けてくる。

「でもさ、浜辺での様子じゃ、あんた相当怒ってたでしょ?よく冷静にユキたちを抑えてたわね」
「まぁあんときはな。実際怒りが沸きはじめたのは浜辺でお前がからかわれた時だよ」
「えっ?」
「お前が悔しそうな顔してるのを見てたら俺まで悔しくなっちゃってさ」
 目の前で友達がいじめられたら黙っちゃいられないっつうの。
 実際ルナサイドに入った頃は話し合いでの解決も考えてたんだ。
 それに、最悪俺1人でケンカしようと思ってた。

 けど相手のマークを見て思い止まったよ。

 連中は無法で有名なユニのマークをかざしてた。
 あのユニは無法者たちが組織した迷惑集団で、その名前はマナの世界中に響き渡っている。
 手段はともかく知名度は俺たち以上、実力もあるって噂だ。
 決して油断できる相手じゃない。

 とはいっても負ける気なんか一切ない。
 格上だろうとなんだろうと、俺の仲間たちに手を出したことを後悔させてやる。


 のんびりと歩いているつもりだったが、あっという間に亜美の家に着いた。
「じゃあな」
「うん、おやすみ」
 亜美に別れを告げた俺はそのまま自宅に帰った。



 急な話だが決戦の日は2日後に決まったと、あの日の夜、月からメールが入った。
 試合の形式は前回のホワイトウィンドウ戦と同じポイント式。
 連中を完膚無きまで叩き潰すにはもってこいの形式だな。
 試合会場は公平さを図るために非公開、試合当日までお楽しみってわけだ。




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